かぼちゃほろほろ

フィクションを書きます

2020-05-18から1日間の記事一覧

いつかの、(春に)

四章 春の泊。桜はまだつぼんだまま、人々の期待をシャワーみたいに浴びせられている。海良さんは三年生になり、わたしは変わらず同じ教室へ登校する。新入生たちとは付かず離れずの距離を保ちつつ、昼休みは屋上へと向かう。海良さんは大抵、アルカイック・…

いつかの、(邂逅)

三章 気が付くと二月になっていた。ベージュのコートはわたしを日々包んでくれたけれど、誰もわたしを抱きしめてはくれなかった。寒い。オイルヒーターのある壁際へ席が替わってもなお、わたしの寒さはわたしのもののままだった。 自転車は修理に出す踏ん切…